池田活版印刷所便り_Blog

2024.5.27 ツバメが帰って来た

DSC 5088 ぼんやりしている間に5月が終わろうとしています。ツバメが帰ってきました。玄関のちょっと窪んでいるところに巣が出来ています。昨年は猫に襲われ、親鳥たちが呆然と電線に留まったままで可愛そうでたまりませんでした。こんなところにはもう二度と巣をかけないだろうと諦めていたのですが、帰って来てくれました。玄関の戸を開けると真上に日に日に大きくなっていく巣を見て、孫たちは大喜び。私は祈るような気持ちでいます。絶対守らなくては。

お帰りなさい、ナナさん。 

急逝した活版女子。活版印刷が大好きで次々と商品を生み出していた才能ある人です。迷っていると「こうしたらいいんじゃないですか」「もっも自信をもってください。活版印刷は価値ある素晴らしいものですから」若い人から発破をかけられ、そうなんだと自信を深めてきました。助けられていました。誰からも信頼され愛されていました。一緒に仕事をするのがとても楽しかった。三人で次の計画をたてていた矢先のこと。本人が一番無念だったと思います。最期に「活版印刷に出会えてよかった」と話してくれたことが私の支えになっています。

きっとツバメになって、毎日電線にとまり工場をながめているのでしょう。 

「紙と活版印刷」準備中です。三人でやり遂げますよ。

2024.4.6 一日一美帖 美を感じる心

DSC 5028 城山は桜満開。川縁は菜の花。ツバメが高速で飛び交い、竹山からウグイスの鳴き声。我が家の小さな庭にチューリップ。春爛漫、ワクワクします。一番好きな季節です。

今回、「御船美術館をつくる会」様のご依頼により「一日一美帖」をデザイナーさんとともに作りました。

御船町は恐竜の町で有名ですが、大正時代より御船は芸術家を大勢輩出しています。浜田知明さん、井手宣道さんは世界的な画家です。御船高校には芸術コースがあり、音楽大学もあり、アートが根付いている町です。私はそれを大変誇りに思っています。

「美」は、ふと感じる心の動き。それを書き留めるノートが一日一美帖です。デザイナーさんと活版印刷のコラボ商品です。表紙印刷、罫線空押し、見開きの活版コード、和綴じ(一日一美)をロウびきした赤と青の糸で表現しました。厳選した紙は描きやすくて、思いっきり鉛筆を動かすと、嬉しくなります。私も使っていますが、花の絵あり、ウグイスのホーホケキョ  ケキョケキョケキョあり、ヤマメの食べたあとの骨あり、孫達の成長に驚いた文あり、雑誌で見つけた素敵な本棚の切り抜きありで、(美)は本当に身近にいつもあるものだと気づきました。これは私だけの大切なノートです。一日にひとつ、(美)に出会う幸せを感じ続けて行きたいと思っています。

皆様も自分だけの(美)のノートを作っていかれませんか?

今回50冊限定販売です。当店で販売しています、1冊税込み3300円です。現在約半数程購入されています。関心のある方、ご連絡ください。お待ちしております。

2024.3.15 活字アソビのデビュー

DSC 49933月9日  10日は、第3回ミフネ古本市が開かれました。同時に活版印刷も協賛で出店しました。お天気がよくて人の波が途絶えることなく大盛況でした。こんなに本好きの方がいらっしゃるんだと嬉しくなりました。

当店も活版女子部の可愛くて繊細な活版グッズが大好評でした。カードやメモ帳  お手紙セット、活字みくじなどを購入されていました。私は手キンを出張させて(会場が隣り合わせなので)  ガッチャンと栞作り の体験をしてもらいました。3枚の紙を選んでもらい、ローラーを動かして1  2  3で力を込めます。皆さんそうっと印刷した紙を取り上げて「すごい」「かわいい」と笑顔になられます。本に挟まれる栞を想像しました。

もうひとつの体験が「活字アソビ」です。ご苦労様の活字たちに最後のお仕事と旅立ちを見守ろうと思いました。使えない活字たちがお客さまの手によって再び活躍する場に登場して、静かに対話する時間を与えられる、素敵なことだと思いませんか?子どもたちは頭をかかえたり、消ゴムで消したりとちょっと悩んでいました。旧字体の文字もあってスマホで検索される方もおられます。連想する言葉を考えることは楽しいことです。お客様は、久しぶりに字を書いたと感慨深げ。偶然に手に取った文字と対峙する時間がとてもよかったと静かに時間が流れました。使われた6本の活字はお土産です。ありがとう、行ってらっしゃーい。

今回は工場(こうば)見学の時間を取りました。大勢のお客さまが来られ驚きました。活版印刷の概要、工場内の説明、マークやコースターの体験、組版の実演。関心をもって見られていて緊張しましたが、いい機会になったと思いました。

2024,2.9 職人さんの心を受け継ぐ

DSC 49541月下旬、ご縁があって大量の活字が持ち込まれました。廃業された福岡の印刷屋さんから、次々といろんな人の手に渡り、私のところにたどり着きました。

当店には一式揃っているので、補充のためにいいかもしれないと思って引き受けたのですが、多すぎました。活字箱が30箱ぐらい、小さい段ボールの箱が8つ、紙袋が3つ、プラステックの箱にきれいにすること整理されたものが4箱。

前の持ち主がとてもきれいに丁寧に梱包されていたのに脱帽です。活字が痛まないようにクッション材が間に挟んであります。落ちないように段ボールとテープで固定してありました。旅立ちを惜しむような、門出を祝うような、旅の安全を願うような気持ちを感じました。

さて、どうしたものか。

まずは開封してみました。銀色に光っています。新しいものが多くびっくりしました。当店の活字は黒いのです。100年使っていればこうなるんだなあと妙に感心しました。もう酸化していて白い粉がふいているのもありました。ゆっくり時間をかけて仕分けしていこうと思っています。

その中で興味深かったのが、組版のままのものがたくさんありました。よく見ると結婚式の案内状や株主総会の案内状、退職のお礼状、名刺などが次々と出てきました。そこで初めてこれ等を組んだ職人さんの思いが伝わってきました。どんな人だったのだろう。きれいに組んである、こういうやり方があるんだ、うちにはこんな薄い八分のインテルはないなあ。平成八年が見える、30年くらい前の版が残っている。なぜ解版しなかったのだろう。いろいろと思い浮かべています。

うちにやって来たご縁を大切に、きちんと見分けて整理するのが私の役目だと決意しました。1本1枚たりとも無駄にできないと覚悟を決めています。頑張ろう。

2024.1.26 活字で遊びましょう

DSC 4945 満月、世界中の人が見ていたでしょう。1月も終わろうとしています。

新春第1段    「 活字アソビ 」カード作成‼️

工場の片隅の箱に廃棄用のメツ活字が山ほど入っています。うちの活版女子が目をつけて活字みくじを作り大好評でした。もったいない精神と活版印刷を知ってもらいたい一心で手作りしていました。ありがたいことです。

このままにしておくのも、溶かしてしまうのも、廃棄処分するのも何となく違うなあと躊躇していました。ご苦労様の活字達です。傷ついたり欠けたりした痛々しい活字達です。

そこで、もう一度息を吹きかけて活躍できる場を作ろうと考えました。名付けて「活字アソビ」。活版印刷体験の一つとして、大勢の人に楽しんでもらいたいと思っています。

方法についてはまだ試行錯誤中ですが、きっと喜んでもらえそうな気がします。ワクワクするような時間になったらいいなあと思います。自分の中の言葉とじっくり向き合える場を提供したいです。そして、最後には使った活字を持って帰って頂きます。最後の旅立ちとなります。

気がついたことがあります。活字は、日本語の最小単位だということ。この組み合わせで言葉ができているということ。当たり前のことですが、目で見て触ることのできる活字は、面白いです。早く完成させますね。