池田活版印刷所便り_Blog

2024,2.9 職人さんの心を受け継ぐ

DSC 49541月下旬、ご縁があって大量の活字が持ち込まれました。廃業された福岡の印刷屋さんから、次々といろんな人の手に渡り、私のところにたどり着きました。

当店には一式揃っているので、補充のためにいいかもしれないと思って引き受けたのですが、多すぎました。活字箱が30箱ぐらい、小さい段ボールの箱が8つ、紙袋が3つ、プラステックの箱にきれいにすること整理されたものが4箱。

前の持ち主がとてもきれいに丁寧に梱包されていたのに脱帽です。活字が痛まないようにクッション材が間に挟んであります。落ちないように段ボールとテープで固定してありました。旅立ちを惜しむような、門出を祝うような、旅の安全を願うような気持ちを感じました。

さて、どうしたものか。

まずは開封してみました。銀色に光っています。新しいものが多くびっくりしました。当店の活字は黒いのです。100年使っていればこうなるんだなあと妙に感心しました。もう酸化していて白い粉がふいているのもありました。ゆっくり時間をかけて仕分けしていこうと思っています。

その中で興味深かったのが、組版のままのものがたくさんありました。よく見ると結婚式の案内状や株主総会の案内状、退職のお礼状、名刺などが次々と出てきました。そこで初めてこれ等を組んだ職人さんの思いが伝わってきました。どんな人だったのだろう。きれいに組んである、こういうやり方があるんだ、うちにはこんな薄い八分のインテルはないなあ。平成八年が見える、30年くらい前の版が残っている。なぜ解版しなかったのだろう。いろいろと思い浮かべています。

うちにやって来たご縁を大切に、きちんと見分けて整理するのが私の役目だと決意しました。1本1枚たりとも無駄にできないと覚悟を決めています。頑張ろう。